血液内科診療施設部門診療クラスター主な血液疾患の解説33多発性骨髄腫特発性血小板減少性紫斑病溶血性貧血骨髄異形成症候群急性白血病慢性骨髄性白血病真性赤血球増加症・本態性血小板血症悪性リンパ腫 骨髄の中では造血幹細胞と呼ばれる血液細胞の種から様々な血球が造られます。白血球、赤血球、血小板などの血液細胞は生きていく上で不可欠な細胞です。白血球は細菌などからヒトを守る細胞、赤血球は酸素をあらゆる臓器や組織に運搬する細胞、血小板は出血を止める細胞です。造血幹細胞が様々な細胞に成長していくことを分化といいますが、急性白血病は、分化の速い段階で細胞が成長をやめてしまうことによっておこります。この成長をやめた細胞(白血病細胞または芽球と呼びます)が骨髄中で増殖し、骨髄を占拠します。その結果、正常な血液細胞が造られなくなり、出血、感染によって致命的な経過をとります。大部分の急性白血病の原因は不明です。診断が確定すれば入院の上、早急な治療が必要となります。初めの治療は抗がん剤による化学療法です。最初の化学療法(寛解導入療法)は完全寛解(顕微鏡検査で白血病細胞がみられなくなり、血球数が正常値となる状態)を目指します。完全寛解となっても体内に白血病細胞は残存しているので地固め療法や維持療法といった化学療法を繰り返し行い、根治を目指します。また、病状にあわせて造血幹細胞移植やベネトクラクスとアザシチジンの併用療法、FLT3阻害薬、抗体薬物複合体薬、二重特異性抗体薬などの分子標的療法も行います。 慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞の遺伝子に異常が起こり、発症します。その結果、成熟した血球(特に白血球)が必要以上に作られますが、症状はほとんど出ません。治療は、チロシンキナーゼ阻害薬を内服します。チロシンキナーゼ阻害薬は、第1世代のイマチニブ、第2世代のダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、第3世代のポナチニブの5種類があり、それぞれの患者さんに合わせて薬剤を選択します。チロシンキナーゼ阻害薬での治療継続が困難な場合には、新しい作用機序を持つアシミニブで治療をします。 造血幹細胞に異常が起こり、必要がないのにもかかわらず、血球がどんどんと産生される病気を骨髄増殖性腫瘍といいます。骨髄増殖性腫瘍の中にあって、主に赤血球が増える病気が真性赤血球増加症、主に血小板が増える病気が本態性血小板血症です。真性赤血球増加症は真性多血症とも呼ばれます。真性赤血球増加症では、赤血球の数を減らす治療をします。瀉血(しゃけつ)といって、献血と同じように、約400mlの血液を抜き取ります。しかし、赤血球の増加が著しく瀉血が頻回になる場合、内服の抗腫瘍薬であるハイドロキシウレア、ルキソリチニブやロペグインターフェロンを投与して、赤血球数を低下させます。本態性血小板血症では、アスピリンやチクロピジンなどの抗血小板薬(血小板の機能を低下させる薬)を投与して、血小板の働きを抑えます。また、ハイドロキシウレアやアナグレリドを投与し、その数を減らします。いずれの治療も、病気そのものを治すことはできませんが、コントロールすることによって、血栓症などの合併症の起こるリスクを減らすことができます。予後は比較的良好ですが、長い経過の中で骨髄線維症に移行することがあります。まれに急性骨髄性白血病に進行することもあります。 ヒトには感染や異物(がん細胞など)から体を守っているリンパ系組織(=免疫システム)があります。この組織を構成しているリンパ球が必要ないにもかかわらず異常に増える病気が悪性リンパ腫です。様々な病型があり、大きくはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられます。非ホジキンリンパ種は、さらにB細胞リンパ腫とT細胞リンパ腫に分けられます。発症する原因としては、ウイルス(EBウイルスなど)、細菌(ピロリ菌)、自己免疫疾患(関節リウマチなど)、免疫不全を引き起こす薬剤治療(メトトレキサートなど)、化学物質への暴露が挙げられますが、ほとんどが明らかではありません。治療は、悪性リンパ腫のタイプ、病期によって決まります。多剤併用化学療法、造血幹細胞移植、CAR-T細胞療法など病状に応じて様々な治療が行われます。 ヒトの体には形質細胞という細胞があり、免疫グロブリン(抗体)と呼ばれる蛋白を作っています。この蛋白は細菌、ウイルスなど体内に侵入してきた異物を攻撃します。多発性骨髄腫は、必要のない形質細胞が増殖して不良品の免疫グロブリンを産生する腫瘍性疾患です。増殖する形質細胞(=骨髄腫細胞)から産生される免疫グロブリンをM蛋白と呼びます。稀に30歳代あるいは40歳代の比較的若い方に発病することもありますが、年齢の高い方に多い病気であり、多くの場合60歳以上です。主な症状には、病的骨折、腎臓の機能低下、貧血、感染症などがあります。治癒することが難しい疾患で、早期治療により生命予後が改善しないため、症状がない無症候性骨髄腫の場合には、定期的に経過観察をして症候性骨髄腫となった時点で治療を開始するのが一般的です。病気と共に、通常の人と変わらない生活を長く行えるようにすることが治療の目標になります。治療は、プロテアソーム阻害薬、免疫調整薬、抗体薬による多剤併用化学療法や造血幹細胞移植、CAR-T細胞療法を行います。これらの治療により、近年、予後は大きく改善しています。 血液中を流れる血小板が免疫の異常により減少し、出血しやすくなる病気です。通常は外から侵入してくる細菌やウイルスなどを攻撃する働きをしている抗体が、自分自身の血小板に結合することで血小板が血液中から速やかに除去されその数が減少してしまうことで発症します。出血傾向が強くなければ経過を観察します。治療は、ピロリ菌感染が見られる患者さんに対しては、除菌療法を行います。ピロリ菌に感染していない、あるいはピロリ菌を除菌しても血小板が増えない場合、ステロイド療法を行います。同療法により約8割の方で血小板が増えますが、完全に治るのは約2割にとどまり、多くの患者さんは大きな出血を避けるために少量のステロイドを飲み続ける必要があります。ステロイドを減量できない場合は、血小板を壊している脾臓を手術で取ることがあります。脾臓摘出をしても血小板数が増加しない場合、血小板を増やすトロンボポエチン受容体作動薬や免疫抑制剤による治療を行います。ステロイド療法や脾臓摘出が無効であった症例に対して、抗体薬であるリツキシマブやホスタマチニブを投与します。 溶血性貧血は貧血の一種で、血管の中を流れる赤血球が破壊される(溶血)ことにより起こります。これによって貧血に伴う息切れやふらつきの他、眼球が黄色くなる(黄疸)、胆石、褐色尿などの症状が出現します。先天性のものでは遺伝性球状赤血球症やサラセミアなどが挙げられます。後天性のもので代表的なものには、自己免疫性溶血性貧血や発作性夜間ヘモグロビン尿症が挙げられます。自己免疫性溶血性貧血に対しては、副腎皮質ホルモン(プレドニゾロンなど)が治療の中心になります。治療経過によっては、脾臓摘出術や、免疫抑制薬などが選択されることもあります。貧血の進行が急速な場合は輸血による補充を行うこともあります。 骨髄異形成症候群は、造血幹細胞の異常によって起こる病気です。造血幹細胞が成熟した血球に順調に成長できなくなり、白血球減少、貧血、血小板減少が起こります。また、骨髄と末梢血に、成長障害の程度を反映して未熟な血液細胞(芽球)が様々な割合で見られます。芽球の割合が多ければ多いほど、病状は進んでいると判断されます。割合が低いもの(5%未満)は、低芽球性骨髄異形成症候群と呼ばれます。これに対し割合が高いもの(5〜 19%)は、芽球増加型骨髄異形成症候群と呼ばれます。なお、割合が20%以上になった時点で、急性骨髄性白血病に移行したと診断します。症状の軽い患者さんでは、無治療で経過観察することもよくあります。症状や病気の状態は患者さんにより様々であるため、検査結果などから評価して、予後予測を行い、アザシチジンの投与や造血幹細胞移植などの治療を行います。
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