薬剤部

概要

薬剤部では、全ての患者さんが安心して、効果的にお薬を使用していただけるよう、お薬にかかわる様々な部門で業務を展開しています。
内容は、お薬の調剤、患者さんへのお薬の説明、医薬品情報の収集・評価と提供、医薬品管理、院内製剤、注射薬混合調製等多岐に渡っています。それぞれの業務は、患者さんを中心として医師や看護師など他の医療スタッフと連携しており、患者さんに信頼される質の高い安全で安心な医療を提供することを目指しています。
また、医療人の育成においては、大学と連携して11週間にわたる薬学部実務実習生を年に3回受入れており、医療の高度化に対応した薬剤師の育成にも力を注いでいます。

特色・方針・目標

薬剤部では薬剤師を病棟毎の担当制にしており、入院中の患者さんへの服薬指導をはじめ適正なお薬の処方設計に積極的に関わっています。
また、様々な診療科や病棟で臨床経験を積んだ薬剤師は、緩和ケア、がん治療、栄養サポート、感染制御やHIV感染症などの専門的な領域のチーム医療における一員として診療に関わり、患者さんに使用される医薬品の適正使用の推進や副作用を予防・軽減するための処方を提案することで患者さん中心の医療に貢献しています。また、使用された医薬品の血液中の濃度を測定・解析することで、その後の医師の処方設計なども支援しています。
薬剤部には主に以下の専門・認定薬剤師が在籍しています。

医療薬学会医療薬学指導薬剤師  3名
医療薬学会認定薬剤師      7名
医療薬学専門薬剤師       6名
がん薬物療法認定薬剤師     1名
外来がん治療認定薬剤師     1名
緩和薬物療法認定薬剤師     5名
緩和医療暫定指導薬剤師     1名
救急認定薬剤師         2名
抗菌化学療法認定薬剤師       3名
感染制御認定薬剤師         1名
HIV感染症専門薬剤師        1名
HIV感染症薬物療法認定薬剤師   2名
NST専門療法士            4名
日本糖尿病療養指導士        2名
小児薬物療法認定薬剤師       5名
病院薬学認定薬剤師       57名
(2020年10月現在)

主な実績

薬剤部では外来・入院併せて1日に約2,000枚の処方せんに対応しています。注射薬では、一般病棟の500mL以上の輸液を混合調製しています。また、小児病棟では全ての注射薬の混合調製を実施しており、当院の特色の一つと言えます。注射薬の抗がん剤は、休祭日も含めて全て薬剤部で混合調製しており、外来・入院併せて平均100~120件の調製を行っています。また、リウマチ疾患やその他の自己免疫疾患に使用する抗体製剤の調製から患者指導まで広くかかわっていることは当院薬剤部の特徴です。薬剤管理指導業務は、病棟担当制で行っており、全ての病棟の入院患者さんに対して服薬指導の実施や医薬品の適正使用に関する情報提供を行っています。

名称 件数 備考
処方せん枚数 外来:318,421枚,入院:217,912枚 2020年度
入院注射薬調製件数 抗がん剤:10,903件、一般注射薬:75,489件 2020年度
外来注射薬調製件数 抗がん剤:14,553件、抗体製剤:10,794件、一般注射薬:11,791件 2020年度
薬剤管理指導件数 28,390件 2020年度

ご挨拶

慶應義塾大学病院薬剤部では、患者さんに安心、安全かつ高質な薬物療法を提供するために、教職員が一丸となってとり組んでおります。そのためには、医薬品を正しく提供することはもちろん、患者さんの病状、生活様式、体質などにあわせて適切に医薬品情報をご提供したり、患者さんからの薬物治療に関する悩みや疑問などを受けとめ、患者さんや他のスタッフと協力して問題を解決していきます。一方、薬剤業務の効率と正確性のさらなる向上にむけて、最先端のAI技術、機器を積極的に導入しています。
教育面では、医学部病院薬剤学教室 (2021年新設) や薬学部の病院薬学講座、医療薬学・社会連携センターなどとの連携により、薬学部などの医療系学部の学生教育を担っています。薬剤部員に対しては、薬剤業務や学生指導を通して体系的にスキルアップできる体制が整っており、専門薬剤師や博士の学位の取得を志す職員も、十分な支援や指導が受けられます。
薬物治療の未来を先導する pharmacist-scientist を養成し、彼らが活躍・成長する場を提供することで、薬物治療のさらなる向上に資することが、私たちの使命と考えています。慶應義塾大学病院薬剤部で学びたい方、働きたい方、一緒に研究をしたい方をお待ちしています。
                                    薬剤部長 大谷 壽一

薬剤部組織図

調剤担当

医師が入力したお薬は処方せんとして調剤室で発行されます。薬剤師は、処方されたお薬が「正しく使用されているか」「患者さんにとって適切か」というチェックをしてから調剤を行います。もちろん、疑問点があればすぐに医師へ確認を行います。
当院の特徴は、調剤業務に非薬剤師の導入を実施している点です。2019年よりピッキングマシンやSPDさんがお薬の取り揃えを行い、薬剤師は最も職能を発揮できる処方鑑査や患者さんの対応に注力するようになりました。

注射・製剤担当

抗がん剤や点滴など注射で治療を受ける患者さんのお薬の準備、調製を行います。
薬剤師は、飲み薬と同様に注射薬も十分なチェックを行うだけでなく、直接体内に入るお薬なので清潔な環境で混ぜ合わせることで雑菌が入らないように準備しています。
また、抗がん剤などの注意が必要なお薬では、患者さんや薬剤師、他医療者への放出・飛散を防ぐための様々な方法を実施しています。

情報・治験担当

医薬品情報室は、医薬品の情報収集や提供、そして患者さんや医療者からの問い合わせの対応を行い、病院内で医薬品の適切使用を推進しています。
お薬に関する注意喚起や安全性の情報は日々更新されています。その情報を薬の専門家として評価・判断し、医療従事者ならびに患者さんに提供することで、安全かつ適切に使用することが出来ます。
また、新しい薬の開発過程である治験で使用される治験薬を管理する業務も行っています。開発中のお薬であるため厳密に規定された管理・調剤方法を遵守することで、品質が確保された治験薬を提供しています。

薬剤部の主な業務

 調剤業務
医師が診察した際に、お薬による治療が必要な場合には処方せんが発行されます。薬剤部では発行された処方せんに基づき、適正使用を確認して患者さんにお薬を準備しています。
 製剤業務
主に市販されていない特殊なお薬を患者さんや医療現場からの要望により調製・提供しています。
 病棟業務
入院患者さんへのお薬の説明をとおして、そのお薬がしっかり飲めているか、副作用が出ていないかを確認しています。また、医師や看護師をはじめとする他職種へお薬の情報を発信することで、患者さんを中心としたチーム医療を行っています。
 医薬品情報業務
医薬品に関する様々な情報を収集・評価し、患者さんや医療スタッフに対して情報を発信しています。
 医薬品管理業務
病院で使用される医薬品の購入、適切な在庫・品質管理を行い、いつでも患者さんへ安心で安全なお薬を供給できる体制を整えています。
 注射薬混合調製業務
注射薬による治療を受ける全ての患者さんの注射薬を取り揃え、適正使用を確認したうえで、清潔な環境で注射薬を混ぜ合わせ、病棟に払い出しています。
・その他
中央手術部サテライトファーマシーおける医薬品管理業務、治験管理業務、放射性医薬品検定業務、各種専門医療チームへの参加

薬剤部が取り組む安全対策

医療事故の3割は薬剤に起因すると言われています。薬剤部では医師をはじめとして各職種と連携し、院内の安全対策に積極的に取り組んでいます。特にバーコードを用いた安全対策については、新しいシステムを構築して、そこで得られた最新の知見は研究成果として論文報告し、他施設へも発信を行っています。

研究・研修について

薬剤部では日常業務だけではなく研究や部内研修なども行っています。これらの活動は、薬剤部員の資質向上や専門・認定などの資格を取得する上で重要な役割を果たしています。
【臨床研究】
調剤や院内製剤など日常業務に関連するものから、診療科や関係職種と協働して行うものまで多岐の領域に渡っています。職員嘱託を問わずやる気のある薬剤師は誰でも参加できます。
●感染制御チーム
・抗菌薬使用と副作用の関係性に関する調査
●緩和ケアチーム
・がん性疼痛マネジメントに対する鎮痛薬の使用調査
●院内製剤
・院内製剤の安定性と有効性の調査
●安全対策
・医療用医薬品のバーコード表示の有用性に関する調査
など
【部門内研修】
① 臨床研究セミナー(月1回)
薬剤部内の臨床研究は定期的に部内発表会を行い、そこで議論を深めています。初心者でも研究に参加出来るよう、研究支援グループが活動をサポートしていきます。
② 論文抄読会(週1回)
各専門領域や病棟担当者、若手や管理職まで、その時々のトピックスや、最新の薬物治療を把握する上で重要な論文などをテーマに論文抄読会を開催しています。論文の読み方講習会の開催など、論文に慣れていない若手に対するサポートもあります。

新人薬剤師のステップアップ

業務以外でのスキルアップ

研究サポート

先輩の声

飯塚 直人(2019年入職 北里大学大学院薬学研究科博士課程修了)
現在、私は、2年目として、1ヶ月の約半分は病棟業務、残りの半分は抗がん剤調製、手術センター、小児調製、中央業務(調剤、注射・製剤)等に従事しています。1年目で基本的な業務(調剤、注射・製剤、医薬品情報)を学び、2年目では応用業務(病棟、抗がん剤調製、手術センター、小児調製)が本格的に開始となりました。病棟業務では、精神科・小児科・産婦人科・ICU/HCUなどを担当するチームに所属しています。経験豊富なメンター・アドバイザーのもと、業務の度にフィードバックをして頂き、充実した研鑽を積むことができています。抗がん剤調製等においても、それらの領域に秀でた先輩の指導のもと、研鑽を進めています。教育システムが充実しており、職場の風通しも良く、入職して良かったと感じています。今後は、病棟業務を遂行する十分な力を習得し、興味を持っている領域の認定・専門薬剤師を目指していきたいです。その過程で、現在、取り組み始めている研究も発展させ、患者さんの薬物治療に貢献できる薬剤師になりたいと考えています。

五十嵐美帆(2019年入職 慶應義塾大学薬学部卒)
入職して2年目となる現在は病棟薬剤業務、注射・製剤業務、調剤業務、手術センター業務等に携わり、日々多くのことを吸収し学びながら働いています。多くの診療科・部門をもつ大学病院だからこそ様々な薬剤に触れる機会が多く、経験豊富な先輩方からのご指導・アドバイスもいただきながら、自身の成長に繋げています。今後は自分の興味のある分野での認定・専門薬剤師を目指しながら、様々な経験を積んでいきたいと考えています。

宮城 奈都(2020年入職 星薬科大学卒)
入職1年目は調剤部門、注射・製剤部門、医薬品情報部門をローテーションし各部門における基本的な業務を習得していきます。研修期間は定められておらず、現場で教えていただきながら、個人の到達度に合わせて徐々に独り立ちしていきます。各部署での業務習得に加えて、メンターの先生の指導の下、病棟業務の習得も始まりました。現在、入職してから9ヵ月が経ちますが、毎日発見の連続で日々学びながら働いております。分からないことや相談事はメンターの先生をはじめ、先輩方が親身に聞いて下さるため安心して仕事に取り組めています。

入職希望の方へ

慶應義塾大学病院 薬剤部で広い臨床知識と広範な技能を身につけよう!

<当院薬剤部の特色>
各薬剤業務のスキルアップができます。
・特殊な薬剤・多診療科を対象とした調剤や、抗がん剤の混合調製、院内製剤、医薬品情報など広範な領域の薬剤師の技能習得ができます。
・移植、抗がん剤治療および自己免疫疾患などの高度で広い疾患領域の服薬指導経験を積むことができます。
・感染、緩和などチーム医療に参加出来ます(病棟ラウンド、カンファレンスなど)。
・各種資格要件の実績を積むチャンスがあります(がん専門薬剤師研修施設、薬物療法認定薬剤師研修施設、日本医療薬学会認定薬剤師研修施設)。
・各種認定に必要な論文や学会発表の共同著者(演者)になることもできます。

<嘱託職員の先輩は関連病院をはじめ、他施設へも就職しています>
就職例)順天堂大学医学部付属病院、千葉大学医学部付属病院、東京女子医科大学病院、日本大学医学部付属板橋病院、駿河台日本大学病院、東邦大学医療センター大森病院、日野市立病院、国立成育医療研究センターなど

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業績 

原著論文・学術雑誌(欧文)
Sakurai Hiroomi, Ikeuchi-Takahashi Yuri, Kobayashi Ayaka, Yoshimura Nobuyoshi, Ishihara Chizuko, Aomori Tohru, Onishi Hiraku: Formulation of mucoadhesive microparticles and gel preparations with mucoadhesive microparticles for reducing pain in oral mucositis: in vitro and in vivo evaluation. Pharmaceutics, 12, 603 (2020).

Isawa Minae, Kajiyama Miku, Tominaga Keiko, Nakata Hideo, Aomori Tohru, Mochizuki Mayumi Review of clinical studies on the nocebo effect Die Pharmazie, in press 

Tanaka E., Hara N., Wajima T., Ochiai S., Seyama S., Shirai A., Shibata M., Shiro H., Natsume Y., Noguchi N.: Emergence of Haemophilus influenzae with low susceptibility to quinolones and persistence in tosufloxacin treatment. J Glob Antimicrob Resist. in press. 2019.

Hara N., Wajima T., Seyama S., Tanaka E., Shirai A., Shibata M., Natsume Y., Shiro H., Noguchi N.: Isolation of multidrug-resistant Haemophilus influenzae harbouring multiple exogenous genes from a patient diagnosed with acute sinusitis., J Infect Chemother. 25 (5): 385-387. 2019.


原著論文・学術雑誌(和文)
青森達:チームアプローチで実現するゲノム医療と薬剤師の役割. 薬学雑誌2020年140巻5 号 p. 649-650 
櫻井洋臣:ゲノム医療に係わる薬剤師の育成に向けた取り組み. 薬学雑誌2020 年 140巻 5 号 p. 673-675
清宮啓介: 代表的 8 疾患と薬局実習が病院実習の到達度に与える影響. 医療薬学 in press
清宮啓介:メトトレキサートの排泄と有害事象に及ぼすプロトンポンプ阻害薬併用の影響.医療薬学(2019)
津田 壮一郎: 実務実習における代表的な8疾患の網羅性と継続性の向上を目指した薬局-病院実習連携ツールの開発. 医療薬学(2019)

国際学会報告
Harumi Kondo, Hiroomi Sakurai : Patient care, education and clinical research in autoimmune disease., Bandung, Faculty of Medicine University of Padjadjaran/ Hasan Sadikin General, 2018.

Hiroomi Sakurai : Best practice in handling of DMARDs and biologic agent., Jakarta, Keio-Perhimpunan Reumatologi Indonesia Course on Rheumatology, 2018.

Kenji Kawasumi, Shinya Suzuki, Hiroomi Sakurai, Michiko Hamamoto, Hiroyoshi Kato: Advance of Oncology Pharmacist and Adherence Rate of Standard Chemotherapy from the Nationwide Survey for Cancer Designated Hospitals in Japan. Shanghai, The International Society of Oncology Pharmacy Practitioners (ISOPP)2018.

国内学会報告
石川 春樹: ⾃動⾛⾏デリバリーロボット“Relay®”による医薬品搬送の検討 第24回日本医療情報学会春季学術大会
 
坂本 麻味:中~高用量オピオイド鎮痛薬投与患者におけるナルデメジンの有効性の検討 緩和・支持・心のケア合同学術大会2020

金子 健:実臨床におけるナルデメジントシル酸塩の有効性の検証 第58回日本癌治療学会学術集会

江崎 雄仁:先天性頭蓋内巨大奇形腫における低侵襲性治療戦略の確立 第58回日本癌治療学会学術集会

青森 達:AI・ロボットの活用で変容する薬剤業務 第30回日本医療薬学会年次

清宮 啓介:「妊娠・授乳と薬相談業務」による情報提供後の転帰調査 第30回日本医療薬学会年次

瀬山 翔史:アデノシン三リン酸測定法による投薬窓口の汚染状況と接触感染予防対策の検討 第30回日本医療薬学会年次

中田 英夫:製薬企業が作成した患者向け吸入指導資材の記載内容に関する調査 第30回日本医療薬学会年次

小谷 宙:組み換えPCRを用いた準完全長HIV-1 プロウイルス定量法の開発 第34回日本エイズ学会学術集会・総会

島村奈緒美,佐藤奈緒美,磯上一成,櫻井洋臣,津田壮一郎, 別府紀子,村松博,青森達: 注射薬個人別取り揃え・払出業務へのSPD導入による薬剤師業務拡大の効果, 第29回医療薬学会年会2019月11月(ポスター発表)

玉川知鮎, 市川双葉, 村松博, 青森達: 未承認等新規医薬品、禁忌・適応外使用に関する管理システムの構築 第29回医療薬学会年会2019月11月(ポスター発表)

清宮啓介,池淵由香,津田壮一郎,別府紀子,青森達: 薬学実務実習における代表的8疾患の経験数が概略評価に与える影響 第29回医療薬学会年会2019月11月(ポスター発表)

磯上一成, 大貫亮, 清水千華子, 渋沢崇行, 佐々木淳一: 慶應オリジナルの安否確認システムの構築について. 第24回日本災害医学会総会・学術集会. 米子, 2019年3月.

木村元範, 中田英夫, 我妻秀和, 遠藤久美子, 石川春樹, 磯上一成, 村松博: トレーサビリティ機能付き冷蔵庫キュービックスの有用性の検討. 日本薬学会第139年会, 千葉, 2019年3月.

櫻井洋臣, 池内由里, 井上雄大, 八木真紀恵, 村岡ありさ, 八木澤茉優, 小林文香, 石原千津子, 望月眞弓, 大西啓: 口腔粘膜への投与を目的とした粘膜付着性粒子製剤の調製および評価. 日本薬学会第139年会, 千葉, 2019年3月.

池谷修, 上蓑義典, 高野八百子, 石川春樹, 宇野俊介, 新庄正宜, 荒美幸, 長谷川直樹: 経口抗菌薬に対する届出制導入とその効果に関する検討. 第34回日本環境感染学会総会・学術集会, 神戸, 2019年2月.