当院で発生した医療事故について

2021年08月19日

慶應義塾大学病院
病院長代行 松本 守雄

当院において病理診断報告書の確認を失念し、患者様がお亡くなりになる医療事故が発生いたしました。

お亡くなりになった患者様のご冥福をお祈りいたしますとともに、患者様、ご家族、関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。このようなことを今後起こさぬよう病院全体での不断の改善の取組みを続けてまいります。


1.事案
2020年の上部消化管内視鏡検査による組織検査にて胃の腺癌が疑われたが、病理診断報告書の確認を失念したため、ただちに対応をとらず、結果として胃癌の悪化により死亡に至った事案。

2.発生経過
当該患者様は、貧血の精査のため、2020年に当院において上部消化管内視鏡検査が行われ、その際に組織検査を受けられました。その病理診断報告書に「por-sigの腺癌(*)と考える」との記載がありましたが、担当医が病理結果を確認することを失念しており、その時点ではなんらかの対応はなされませんでした(以下、「未対応」とします)。
 *:低分化型腺癌と印環細胞癌が混在する腺癌
担当医は上記報告書を検査5か月後、2021年に確認し、至急患者様にご連絡し、精査したところ「胃癌 ステージⅣ」と診断されました。
患者様の希望もあり、在宅療養 となりましたが、その後の癌の進行によりお亡くなりになりました。
2020年に病理診断報告書が作成された時点で精査を行っていれば、手術などにより、癌の進行とそれに伴う死亡という結果を回避できた可能性もございました。

3.事故発生後の病院としての対応
1)患者様・ご家族への対応
上記未対応が判明した時点で、患者様・ご家族様に経緯の説明と謝罪を行い、なしうる最大限の治療についてのご提案を行いました。患者様のご希望により在宅療養となりました。

2)事故調査について
上記未対応の疑いが発覚した時点で、院内医療安全管理委員会の主導により、関係者ヒアリング、現存するカルテ等の資料・画像等の精査を行いました。

4.再発防止策
病理診断報告書の未読・未対応の事案は、全国の病院で発生しており、組織的な対策が求められております。当院におきましても、病理診断報告書を未対応としないように、検査依頼側と検査実施側の両部門にて確認を行うことによって未読・未対応を防ぐ取り組みをしておりました。しかしながら、病理結果が見過ごされ、このような経過にいたりました。現在は、電子カルテ上のシステム改修によって、未読・未対応への注意喚起をより強化する運用を進めております。当院として本件のようなことを二度と起こさぬよう病院全体で取り組んでまいります。

5.事故報告届出先
日本医療機能評価機構(医療事故情報収集等事業)等、行政機関への必要な届出を行っております。

6.ご遺族のプライバシー保護について
この公表については、ご遺族の了解のもとで行っておりますが、当院といたしましてはご遺族のプライバシーが適正に守られることをお願いいたします。

7.本件の問い合わせ窓口
慶應義塾大学病院 総務課 メール:pr-med@adst.keio.ac.jp