実施診療科 | 腫瘍センター |
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承認年月日 | 2024年8月1日 |
適応症 | 咽頭食道憩室(Zenker憩室) |
主な内容
先進性
本邦では軟性内視鏡的憩室隔壁切開術が保険収載されていないこともあり、未だに外科手術や硬性内視鏡手術の症例報告が散見されるだけで標準治療も定まっていないが、欧米ではより患者への侵襲が少なく簡便な経口軟性内視鏡(所謂胃カメラ)を用いた憩室隔壁切開術が開発され急速に広まっている。2018年12月呉医療センター・中国がんセンターの医師が英国人医師の指導の下でZenker憩室に対する軟性内視鏡的憩室隔壁切開術2例を実施、成功し、症状の消失をみとめた。2019年12月現在合計4例に対し施術し、全例臨床的成功を得ている。今後症例数を蓄積してその有用性を明らかにすることで、本邦におけるZenker憩室に対する標準治療となることが期待される。
概要
本治療は、軟性内視鏡を使用し、全身麻酔管理下で施行される。本治療に用いる高周波ナイフは、早期消化管癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に用いられるもので、「内視鏡的に組織の切断、切除、切開、焼灼、止血、凝固、蒸散、剥離等を行うため」の使用に薬事承認されている。
手順の概要は以下のとおりである。
1. 全身麻酔を施行する。
2. 軟性内視鏡を挿入する内視鏡は送水機能付きのものを使用し、送気には炭酸ガスを用いる。
3. 回収ネット等を使用し、憩室内残渣を全部摘出する。
4. 先端フードを装着し内視鏡を挿入。憩室隔壁を確認する。
5. 憩室隔壁に生理的食塩水を局注。
6. 高周波ナイフを用いて、憩室隔壁中央やや食道管腔よりの部分より粘膜切開を開始。
7. 粘膜下層に切開を進め、筋層を同定する。
8. 輪状咽頭筋を切開する。
9. 切開部をクリッピングで縫縮して終了。
効果
従来の治療法と比べ、患者や憩室の特性による制限を受けにくく、患者への侵襲も少ない。その上、手術時間は30分程度と短く簡便で,入院期間の短縮などメリットが多い。その治療成績もメタアナリシスで成功率91%、合併症発生割合11.3%、再発率10.5%と、安全性,有効性とも従来の治療法と同等であった。特に合併症に関しては全例で保存的に加療されており、重篤なものは報告されていない(主な合併症は縦隔気腫5.7%、穿孔4.0%、出血3.1%)。