精神・神経科
概要
精神・神経科では、気分障害、統合失調症、うつ病、不安障害、認知症、脳器質疾患、てんかんをはじめとした精神・神経疾患の診断、治療を行っています。診断のため、血液検査・画像検査だけでなく、様々な心理検査・神経心理学的検査を受けることも可能です。
特色・方針・目標
私たち精神・神経科は脳とこころの問題を扱います。どのような経緯で心身の不調を生じるに至ったかを、脳とこころ、からだ、 環境などの視点から 統合的に理解していきます。
当科では、日本でももっとも長い歴史を誇り、精神症候学の伝統を重んじる一方で、さまざまな先進的な診断技術・高度精神医療を推進し、薬物療法・精神療法に加え、環境調整や社会的資源の積極的な活用を図っています。治療にあたっては、臨床各科とのリエゾン、コンサルテーション、患者さんが生活している地域、さらには専門施設との連携を行っています。
対象疾患は次のようになっております
- 気分障害(うつ病、双極性障害)
- 統合失調症
- 不安障害(社会恐怖や特定の恐怖症などの恐怖症、全般性不安障害、パニック障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害(PTSD)、急性ストレス障害、物質誘発性不安障害)
- 心身症・身体表現性障害・自律神経失調症
- 摂食障害(神経性無食欲症、拒食症、過食症)
- 睡眠障害(不眠症、過眠症、睡眠・覚醒リズム障害など)
- 身体疾患に伴う精神的問題
- てんかん
- 物質関連障害
- 思春期・青年期精神障害
- 老年期精神障害(認知症、せん妄など)
- 家庭・学校・職場のメンタルヘルス
- 高次脳機能障害
- 頭部外傷後遺症
- 脳器質疾患
次のような症状を扱っております
・気分が沈み、悲観的に考える
・無気力で、何をしても面白くない
・集中力がない
・物忘れが目立つ
・イライラして怒りっぽい
・漠然とした不安がいつも続いている
・不安で外出が怖く、乗り物に乗れない
・不安のあまりパニックになる
・戸締まりや火の始末を何度も確認せずにいられない
・汚れやウィルス・細菌などがひどく気になる
・物音や周囲の出来事にひどく過敏になる
・体は不調だが、病院の検査では異常がない
・拒食,過食
・不眠
・学校や職場にうまく馴染めない
検査内容のご案内
- 一般血液検査
- 脳波
- 心理検査
- 神経心理検査
- CT
- MRI
主な実績
精神・神経科の外来初診件数は、年間約1500件(2022年度)、再診件数は、年間約35000件(2022年度)です。初診時の診断としては、不安障害や適応障害などの神経症圏が最も多く、続いてうつ病や双極性障害といった気分障害圏が占めています。入院件数は年間150件程度です。また当院では、難治性のうつ病などに対して実施される修正型電気けいれん療法にも力を入れています。
名称 | 件数 | 備考 |
---|---|---|
初診患者数(診断別) | 人 | 2022年 |
神経発達症群 | 118 | |
統合失調症または他の一次性精神症群 | 112 | |
気分症群(うつ病など) | 433 | |
不安または恐怖関連症群,ストレス関連症群 | 477 | |
食行動症または摂食症群 | 109 | |
物質使用症群または嗜癖行動症群 | 29 | |
パーソナリティ症群など | 15 | |
神経認知障害群(認知症など) | 84 | |
その他 | 143 | |
計 | 1520 |
ご挨拶
現代は「脳とこころの時代」と言われています。精神神経疾患はからだの病気とともに5疾病に挙げられ、その治療と対応はますます重要性を増してきています。当科は初代の下田光造教授以来、日本でもっとも長い歴史を誇り、精神症候学の伝統を重んじる教室です。その一方で、MRI・PET・SPECT等の画像検査をはじめ、さまざまな先進的な高度精神医療を推進してきています。思春期から超高齢者までのあらゆるライフサイクルの脳とこころの問題に対応しています。
すべての身体科とのリエゾン・コンサルテーションはもとより、関連するストレス研究センター、メモリークリニック、緩和ケアセンターなどの院内諸部門、さらには日本最大の同窓会所属診療機関などと連携して、患者さんとご家族にとって最適の治療を目指しています。
医師紹介
氏名 | 写真 | 職位 | 専門領域 | 認定資格等 |
---|---|---|---|---|
内田 裕之 | ![]() |
教授 | 統合失調症、精神科薬物療法 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 日本臨床精神神経薬理学会専門医・指導医 |
村松 太郎 | ![]() |
准教授 | うつ病、統合失調症、高次脳機能障害、司法精神医学 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
前田 貴記 | 講師 | 精神病理学、統合失調症、うつ病 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
|
菊地 俊暁 | ![]() |
講師 | うつ病治療(認知行動療法や薬物療法の最適化など) | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 日本医師会認定産業医 厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー |
竹内 啓善 | ![]() |
講師 | 精神科薬物療法、統合失調症 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 日本臨床精神神経薬理学会専門医・指導医 クロザピン処方可能医師 |
平野 仁一 | ![]() |
講師 | 気分障害、電気痙攣療法 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
中島 振一郎 | ![]() |
講師 | 統合失調症、老年精神医学、気分障害、精神科薬物療法、脳神経画像 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
二宮 朗 | ![]() |
助教 | 気分障害、不安障害、働く人のメンタルヘルス | 精神保健指定医 |
片山 奈理子 | ![]() |
助教 | 気分障害、脳神経画像、認知行動療法 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
谷 英明 | ![]() |
助教 | 統合失調症、精神科薬物療法 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 日本臨床精神神経薬理学会専門医・指導医 |
滝上 紘之 | ![]() |
助教 | 気分障害、統合失調症、精神病理学 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
山市 大輔 | ![]() |
助教 | 気分障害、不安障害、強迫性障害 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
久保 馨彦 | ![]() |
助教 | 統合失調症、気分障害、発達障害 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
澤田 恭助 | ![]() |
助教 | 気分障害、不安障害 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医 |
和田 真孝 | ![]() |
助教 | うつ病、経頭蓋磁気刺激法(rTMS) | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医 |
三村 將 | ![]() |
特任教授(慶應義塾大学予防医療センター) | 老年精神医学、神経心理学、認知症、老年期うつ病、高次脳機能障害、頭部外傷後遺症 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 日本老年精神医学会専門医 日本神経学会認定医 |
田中 謙二 | ![]() |
教授 (先端医科学研究所 脳科学研究部門) |
うつ病、不安障害 | |
佐渡 充洋 | 教授 (保健管理センター) |
気分障害、不安障害、働く人のメンタルヘルス | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
|
岸本 泰士郎 | ![]() |
特任教授 (ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座) |
気分障害、不安障害、強迫性障害、統合失調症、精神科薬物療法、遠隔医療、電気痙攣療法 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
藤澤 大介 | ![]() |
准教授 (医療安全管理部) |
気分障害、不安障害、サイコオンコロジー | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 日本老年精神医学会専門医 日本総合病院精神医学会一般病院連携精神医学専門医(リエゾン専門医) |
中川 敦夫 | ![]() |
特任准教授 (クリニカルリサーチセンター) |
気分障害、不安障害、認知行動療法、精神科計量的評価 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
文 鐘玉 | ![]() |
特任准教授 | 認知症、精神科救急 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
山縣 文 | ![]() |
特任准教授 | 気分障害、発達障害、認知症 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医・指導医 |
野田 賀大 | ![]() |
特任准教授 | 精神神経科(精神医学)、気分障害、統合失調症、発達障害(成人)、臨床神経生理学(脳波)、経頭蓋磁気刺激法(rTMS)をはじめとしたニューロモデュレーション、rTMSを用いた新規医療技術開発 | 精神保健指定医 日本精神神経学会精神科専門医 |
専門外来(特殊外来)のご案内
【発達障害外来】
当外来では、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症,学習障害などの発達障害の診療を行っております。発達障害は、長い間小児科医や児童精神科医が専門に診療されてきたため、児童・思春期が医療の中心でした。しかし、近年は「大人の発達障害」というフレーズが様々なメディアで取り上げられている通り、成人以降にご自身の発達特性から学校や職場、ご家庭においてさまざまな問題を抱え、初めて医療機関へ相談にいらっしゃる方が増えています。
そうしたなか、発達障害はその特性が一生涯続くものであることから、ロングライフ・ディスオーダーとして捉え、年齢を問わず治療や支援を行える専門外来が必要であると私たちは考えております。そのため、当外来は児童・思春期、成人期、老年期を専門とする精神科医が担当し、それぞれが連携を取りながら途切れなく診療を行える体制を整えております。幼少期からの発達歴を丁寧に聴取し、心理検査や脳機能検査なども行いながら、診療をさせていただいております。
また、当事者だけでなくご家族にも参加いただける心理教育プログラムも毎月開催しております。ご自身の特性や困りごとを理解し、その解決方法を探すサポートも積極的に行っております。
<受診の方法>通常の精神神経科の初診の予約をお取りください。はじめに初診医が診察をさせていただき、発達障害の可能性が疑われた場合のみ、次回より当専門外来の予約をお取りいたします。該当しないと判断された場合は、かかりつけの主治医への通院を継続して頂くこともありますので、予めご了承ください。
<当専門外来受診時に必要なもの>母子手帳や小学校の通信簿などがまだお手元にありましたらご持参ください。可能でしたら、幼少期の様子が分かるご家族の同伴もお願いいたします。
<担当医師>
山縣 文(金曜日)
大学の学生相談室と連携し、学生の就学や就労支援を中心に診療しております。また壮年期や老年期の発達障害の診療も行っております。自閉スペクトラム症の脳画像研究や注意欠如多動症の新たな治療法の開発もしております。
沖村 宰(金曜日)
高校生以上の発達障害の診療を担当しております。自閉スペクトラム症のコミュニケーションの特性やその改善方法を言語学(語用論)を用いた視点から研究しております。
山本 保天(木曜日)
成人の発達障害の診療を中心に担当しております。また、22q11.2欠失症候群やダウン症など遺伝性疾患の当事者の方の支援も行っております。
工藤 駿(水曜日)
森長 修一(木曜日)
小学生から高校生の年代を主に担当しております。自閉スペクトラム症などの発達障害を中心に、その他の問題も幅広く取り扱っています。
<心理教育プログラム>発達障害について学び、特性による困り事や対処法について話し合うプログラムを行っております。自分自身の特性について考えたり就労や得られるサポートについて学びます。当事者の方だけではなくご家族の方も一緒にご参加いただける回もありますので、今後について考えるきっかけになれば幸いです。
<担当心理士>中原侑子、小池佳美、高橋美千代
【うつイメージング外来】(対象:うつ病、双極性障害、認知症)
うつ状態にはうつ病だけではなく、双極性障害のうつ期や、認知症の初期のうつ状態もあります。うつ病として抗うつ薬治療しているがなかなか改善されない方や、認知症とうつ病の合併があるのではと疑われる方の治療に関して相談する外来です。MRI画像も鑑別判断に活用しています。産後や更年期にうつ状態になられた方、腰痛・耳鳴り・慢性の頭痛等・身体疾患がきっかけで不眠やうつ状態が改善されない方も対象としています。
<受診の方法>受診希望の方は、病院の初診予約センターよりご予約ください。
(紹介状をご持参ください)
(通常の初診を受診いただき、そこでの担当医経由での紹介で受診いただき、評価の上、再度元の担当医に戻ることもあります)
<担当医師>仁井田 りち
【グループセラピー外来】
グループで話しあうことをとおして、自分と他人の気持ちや人間関係について理解を深めていくことを主な目的としている外来です。話したいのに話せる場がないような対人関係上の問題や人生のテーマを抱えている方、話したいけどまだ言葉にならないような思いを抱えている方もよい対象となります。聞いているだけの参加でもかまいません。他の人の話に耳を傾けられる状態の方、毎週木曜午後14:30-15:45に参加できる方であれば、どなたでも参加できます。
<受診の方法>初診予約センターより、「集団導入前」外来(木曜16時)をご予約ください。(紹介状持参が望ましいですが、無しでもかまいません)
<担当医師>嶋田 博之
【クロザピン外来】
統合失調症の方々の中で、これまで服薬されてきたお薬の効果が十分ではない方、または、対応の難しい副作用のため、十分に服用ができなかった方に対して、クロザピンによる治療が適切かどうか、患者様やご家族と一緒に医師が相談させていただき判断する外来です。クロザピンによる治療が適切とされた場合には、当院またはクロザピン導入が可能な他院における治療の開始を検討いたします。
<受診の方法>受診希望の方は紹介状を準備の上、病院の初診予約センターよりご予約ください。
<担当医師>中島 振一郎
【認知リハビリテーション外来】
高次脳機能障害の診断を受けており、現在精神状態は比較的安定しているが、家庭生活・就労などにもうひとつ結びつかない症例などに、必要な神経心理検査を行いながら生活指導や事業所のサポート者とのコーディネートをします。自宅でできうる認知リハビリテーションについても、患者さん、家族と一緒に考えて施行していきたいと思います。(軽度健忘症・遂行機能障害・軽度失語症者 等が対象です)
<受診の方法>初診は、通常通り受けていただきます。できましたら紹介状をお願いします。通常の初診を受診いただいた後、適切と認められた場合に当外来に予約いたします。
<担当医師>三村 悠
【慢性外傷性脳症外来】
コンタクトスポーツや職業(兵役)などによって軽度頭部外傷(脳振とうを含む)を繰り返し受けた場合に、数年後から認知機能の低下、うつ症状、頭痛、手の震えや転倒などの運動障害などが出現することがあります。こうした頭部外傷後遺症は、「慢性外傷性脳症(CTE)」と呼ばれ注目されています。最近の死後脳研究では脳内にタウと呼ばれるタンパク質が蓄積することが知られています。これまで生存中の診断法は存在していませんでしたが、タウPETと呼ばれる新しい画像検査法により、早期の診断が可能になりつつあります。
当外来では、多数の脳震盪や頭部打撲などの軽度反復性外傷の既往を持つ方、またそれらによって生じた後遺症を持つ方を対象に診療しております。慶應義塾大学病院での高次脳機能検査や、放射線医学総合研究所と連携してタウ・アミロイドPET検査、認知リハビリテーションなどを行っております。
<受診の方法>受診希望の方は紹介状を準備の上(受診歴の無い方はなくてもかまいません)、病院の初診予約センターよりご予約ください。初診後は、慢性外傷性脳症などの頭部外傷後遺症と認められた場合にのみ、診療を行っておりますので、該当しない場合は主治医先生への通院を継続して頂くこともあります。
<担当医師>高畑 圭輔
連絡先
より詳しい情報は当部門の専用webサイトをご覧ください。
受診について
- 当院では患者さんの待ち時間を短縮するため、予約制を導入しています。
- ご予約方法は一般の患者さんと医療関係の方で異なります。