呼吸器外科
概要
当科では肺、縦隔およびその他の胸部臓器の疾患を扱い、年間600症例近い手術を行っています。肺癌はもとより、縦隔腫瘍や転移性肺腫瘍など幅広い悪性腫瘍疾患を扱っています。また、慶應義塾大学呼吸器外科では関連他科との診療連携体制も充実しております。例えば整形外科と合同の椎体合併切除術や、心臓血管外科と合同の人工心肺を必要とする巨大縦隔腫瘍切除など、他院で切除困難とされた高難易度手術も積極的に行っています。呼吸器内科や放射線治療科を含めた肺癌診療チーム内の連携も円滑で、集学的治療、併存疾患への対応も万全です。悪性腫瘍以外にも特殊外来として【気胸外来】と【漏斗胸外来】を設置し日々の診療にあたっております。詳細はhttp://keiothorac.umin.jp/index.htmlをご覧ください。
特色・方針・目標
特に最も手術件数が多い肺癌については、毎週他科と合同でカンファレンスを行い、専門家の知識・経験を集約し最善の治療法を提案します。当科では肺癌に対して、7-8cmの小さな傷に胸腔鏡を併用した胸腔鏡補助下手術を行っています。これは「安全性」、「根治性」、「体への負担」の3者のバランスがとれた優れた方法であり、標準的な肺葉切除の手術時間は約2時間、術後5-6日での退院が可能となっています。
慶應義塾大学病院呼吸器外科では、2016年10月より『気胸ホットライン』を開設しております。このホットラインは当院呼吸器外科医師が24時間体制で医療機関・患者さん本人からの連絡に対して直接対応し、すぐに患者さんを受け入れ、必要があれば迅速に入院、治療、手術を行えるように対応するための窓口となっています。気胸はよくある一般的な病気ですが、時として治療に難渋するケースもあり、地域病院やクリニックでの対応が困難な場合も多いと考えます。このような現状を考え、我々慶應義塾大学医学部外科学(呼吸器)は地域の救急診療(夜間救急)やクリニックと密な連携を取り、多くの患者さんのお役に立てることを目的とし、24時間体制で気胸ホットラインを開設したしました。また、水曜日午後に気胸外来を設けておりますので、気胸に関する相談のある方はいつでもご相談ください。
(水曜日午後:担当医 加勢田馨)
漏斗胸に関する悩みにお答えするため、慶應義塾大学呼吸器外科では漏斗胸専門外来を開設いたしました。漏斗胸の診察は病院により、呼吸器外科、小児外科、形成外科などいろいろな科で行われています。しかし、治療を行っている病院は少なく、多くの方が受診の機会を逃しています。当科では漏斗胸でお悩みの患者さん、ご家族にわかりやすい説明を心がけています。また、当院では小児外科、心臓外科、麻酔科、形成外科、精神神経科と協力して、最適な治療を行います。漏斗胸に関してお悩みの方は、ぜひ当院漏斗胸外来の受診をおすすめします。
(火曜日:担当医 政井恭兵)
その他、肺良性腫瘍、縦隔腫瘍、肺結核性抗酸菌症、膿胸、胸部外傷、胸壁腫瘍などの肺および胸壁に対する胸部外科手術全般に対応いたします。
対象疾患は次のようになっております
- 原発性肺癌
- 気胸(嚢胞性肺疾患)
- 漏斗胸
- 胸膜中皮腫に対する手術や化学療法
- 縦隔腫瘍
- 良性肺腫瘍の切除
- 診断目的の肺の手術
- 甲状腺の腫瘍
- 重症筋無力症や縦隔腫瘍における胸腺
- 肺結核
- 肺非定型抗酸菌症
- 膿胸
- 胸部外傷
- 胸壁腫瘍などの胸壁に対する手術
- 手掌多汗症に対する胸部交感神経切除術
- あらゆる呼吸器外科手術
次のような症状を扱っております
咳が気になる、痰が多くなった、血痰が出る、胸が痛い(痛胸)、息切れがする
検査内容のご案内
- 胸部単純X線
- 胸部CT検査:胸腔内病変(肺内の病変あるいは縦隔内の病変など)の状態を把握・診断
- PET/CT検査
- 気管支鏡検査:肺疾患・気管支内病変に対し直接観察・細胞組織を気管支鏡下に採取し診断・治療を行う検査、気管支鏡を用いた治療(気管支鏡下腫瘍切除・気管支鏡下気管気管支狭窄開大・気管支鏡下腫瘍レーザー焼灼)
- CTガイド下肺生検:小さな病変あるいは影の薄い病変を確定診断
- 肺動脈造影検査
- 肺シンチグラフィー: 微量のアイソトープ(放射性同位元素)を用いて腫瘍の存在や肺内の血流や換気の状態を明かとする検査
- 気管支動脈造影検査:肺切除を必要とするような疾患の場合、病巣周囲の血管構築を明らかとし手術適応や手術法の決定
- 胸部MRI検査: 胸腔内病変特に心大血管と病変との関係を解剖学的・機能的に把握・診断
- 呼吸機能検査
- 精密肺機能検査:ガス拡散能(DLCO)検査
特殊診療施設のご案内
主な実績
慶應義塾大学病院では2018年5月より新病院棟での診療をスタートさせました。新病院棟では全身麻酔手術室の拡充や約3倍のスペースに拡張された救急部門など、患者さんの受け入れ体制を病院全体で強化しております。新手術室の稼働により手術枠が増加し、遅滞なく治療を行う環境も整って参りました。
このような環境下で呼吸器外科手術総数は年々増加傾向であり、2019年は全身麻酔手術578件と過去最高の手術件数となりました。肺癌手術も216件と過去最高の手術数となりました。
今般の新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行状況により、当院でも2020年3月以降、入院患者さんの面会制限など感染拡大防止の対策を講じ、患者さんの安全に配慮しながら診療を行わなければならない状況が続いております。当科は2019年に過去最高の手術件数578件を達成することができましたが、コロナ禍の煽りを受けて満足な診療ができない期間もあり、2020年は508件の手術件数となりました(12%減)。しかしながら、2020年下半期以降は、新規入院治療や初診外来の受付を再開し、現在のところ通常通りの診療体制を維持できております。
我々は専門性の高い技術で安全・確実な手術を心がけ日々の手術を行っています。
患者さんには今まで以上にご満足いただける医療を提供できると思います。
名称 | 件数 | 備考 |
---|---|---|
2021年度手術総数 | 560 | 2020年度手術総数:474 |
2021年度肺癌手術総数 | 169 | 2020年度肺癌手術総数:173 |
2021年度縦隔腫瘍手術総数 | 36 | 2020年度縦隔腫瘍手術総数:40 |
2021年度転移性肺腫瘍手術総数 | 55 | 2020年転移性肺腫瘍手術総数:45 |
2021年度気胸手術総数 | 66 | 2020年気胸手術総数:65 |
2021年度漏斗胸手術総数 | 138 | 2020年度漏斗胸手術総数:88 |
ご挨拶
2014年10月に私が慶應義塾大学医学部教授・慶應義塾大学病院呼吸器外科診療部長に着任して以降、科内の環境整備を整え、経験豊かなスタッフによる安定した診療体制を構築してまいりました。また新病院棟が稼働となり、手術枠を増やすことによって遅滞なく治療を行う環境も整いました。このような診療環境に私が長年培ってきた肺癌診療のノウハウと慶應義塾大学病院独自の強みを加えて、安全かつ精度の高い手術が実践できるようになりました。慶應義塾大学病院では関連他科との連携体制が特に充実しております。例えば整形外科と合同の椎体浸潤肺癌に対する椎体合併切除術や、心臓血管外科と合同の人工心肺を必要とする巨大縦隔腫瘍切除など、高難易度手術にも積極的に取り組んでおります。呼吸器内科や放射線治療科を含めた肺癌診療チーム内の連携も円滑で、併存疾患への対応も万全です。
肺癌の患者さんには検査、入院を可能な限り迅速に行います。当科の特徴は安全かつ精度の高い胸腔鏡補助下肺葉切除術(MIOSアプローチ)、進行肺癌に対する放射線化学療法後の手術療法、気管支の中枢にできた肺癌に対する気管気管支形成術など全ての呼吸器外科手術が施行可能です。また、小さな肺病変に対するCTガイド下針生検(放射線治療科と連携)、や術前の気管支鏡診断も施行可能です。各スタッフが豊富な経験、技術を有した診療を行うだけでなく、関連各科との良好な関係を構築することにより質の高い、安全な医療の提供をします。
また、当科の特徴として、気胸ホットラインを立ち上げ、当科医師が24時間体制で医療機関・患者さん本人からの連絡に対して直接対応し、迅速な診療を行うことのできる窓口設置いたしました。加えて『漏斗胸専門外来』の特殊外来を設置いたしましたので、いつでもご相談ください。
医師紹介
氏名 | 写真 | 職位 | 専門領域 | 認定資格等 |
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淺村 尚生 | ![]() |
教授 診療科部長 |
呼吸器外科 | 日本外科学会外科専門医・指導医 呼吸器外科専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 |
菱田 智之 | ![]() |
准教授 診療科副部長 外来医長 |
呼吸器外科 | 日本外科学会専門医・指導医 呼吸器外科専門医 日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 肺がんCT検診認定機構肺がんCT検診認定医 日本呼吸器外科学会胸腔鏡安全技術認定医 |
朝倉 啓介 | ![]() |
専任講師 病棟医長 病院長補佐 |
呼吸器外科 | 日本外科学会外科専門医・指導医 呼吸器外科専門医 呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 |
加勢田 馨 | ![]() |
専任講師(学部内) | 呼吸器外科 | 日本外科学会外科専門医・指導医 呼吸器外科専門医 日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 |
政井 恭兵 | 専任講師(学部内) | 呼吸器外科 | 日本外科学会外科専門医 呼吸器外科専門医 日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医 |
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大久保 祐 | ![]() |
助教(学部内) | 呼吸器外科 | 日本外科学会外科専門医 日本呼吸器外科学会呼吸器外科専門医 日本呼吸器学会呼吸器専門医 日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 肺がんCT検診認定機構肺がんCT検診認定医 ICD制度協議会(日本呼吸器学会推薦)インフェクションコントロールドクター |
蓄積された専門家の知識と経験をもつ慶應義塾大学病院呼吸器外科。呼吸器のさまざまな疾患に対し、 診察から外科的治療、アフターフォローまで、根治を目指した診療を提供しています。
連絡先
より詳しい情報は当部門の専用webサイトをご覧ください。
- 電話03-5363-3806 (医局直通)
- FAX03-5363-3499
受診について
- 当院では患者さんの待ち時間を短縮するため、予約制を導入しています。
- ご予約方法は一般の患者さんと医療関係の方で異なります。