概要

大血管浸潤腫瘍とは、様々な腫瘍が、身体のなかで最も太く重要な大動脈や下大静脈といった血管(大血管)を巻き込んで広がった(浸潤した)腫瘍であり、通常の外科的手術では治療が困難とされています。急速に病勢が進行して命に関わるため、可及的速やかな外科的手術が必要となる症例や、化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療後に外科的手術が可能になる症例もあり、治療方針の決定が極めて重要となります。また、外科的切除が可能であっても、他臓器合併切除、大血管合併切除、各臓器の術中血流維持など、複雑な手術手技と段取りが求められ、自ずと手術が可能な施設は限られます。当院の大血管浸潤腫瘍治療センターでは、診断、術前治療を含む集学的治療、外科的手術、術後管理、外来フォローを含む一連の医療において、各診療科と各部署のエキスパートが集結し、組織横断的な一枚岩のチームとなって診療を行っております。本クラスターが、大血管浸潤腫瘍に悩む患者さんにとって、ゲートキーパーかつ最後の砦となるように日々精進し診療しております。

特色・方針・目標

慶應義塾大学病院 大血管浸潤腫瘍治療センターは、外科系診療科(一般・消化器外科、呼吸器外科、泌尿器科、心臓血管外科、産婦人科、整形外科、小児外科)、消化器内科、腫瘍センター、循環器内科、救急科など様々な診療科がチームとなって構成されています。

当科で取り扱っている疾患
大血管へ浸潤したあらゆる腫瘍(消化器腫瘍、婦人科腫瘍、泌尿器腫瘍、呼吸器腫瘍、骨軟部腫瘍、血管肉腫、肉腫、下大静脈進展腫瘍など)
他院で外科的手術が困難と判断された症例
自家移植が必要な症例(臓器移植の経験を活かし、腫瘍ごと臓器を患者の体外へと取り出し、体外にて腫瘍を切除し、臓器を再度患者さんの身体へと再移植する手術)

主な実績

2023年9月に当センターが発足し、2024年7月までの10ヶ月で18例の症例が検討され、うち12例に手術を施行し、全例良好な結果を得ております。
手術施行した主な病名:後腹膜腫瘍(神経節細胞腫、平滑筋肉腫、神経線維腫、悪性神経鞘腫)、脂肪肉腫、卵巣癌腸骨動脈浸潤、腎癌下大静脈浸潤、副腎癌肝/下大静脈浸潤など
・特徴的な症例
上腸間膜動静脈を取り囲む悪性腫瘍に対し、小腸血流を維持するため空腸・回腸動脈へ2本の自家静脈バイパス術、大腿静脈による門脈再建を施行し腫瘍を完全切除を施行いたしました。現在論文化中です。

ご挨拶

これまでに当院では、多くの外科治療困難症例に対して様々な診療科が合同で治療に挑んでまいりました。他院で手術困難と判断されても、諦めずに当院に来院いただき、最終的に手術を行うことができた患者さんも少なくありません。これまでに培った経験とその実績をもとに、より円滑に、より質の高い医療を患者さんにご提供することを目的として、大血管浸潤腫瘍治療センターを設立いたしました。患者さんの個々の状況に応じた適切な医療を提供できるよう、全力で努力してまいります。

大血管浸潤腫瘍治療センター センター長 尾原秀明

連絡先

より詳しい情報は当部門の専用webサイトをご覧ください。

受診について

  • 当院では患者さんの待ち時間を短縮するため、予約制を導入しています。
  • ご予約方法は一般の患者さんと医療関係の方で異なります