概要

 小児外科では子どもの病気の中で手術や難しい処置が必要なものを幅広く診察し治療しています。私達は日本の小児外科の先駆けとして発足して以来、常に最先端の技術を求めながら、しかも患者さんの安心のできる医療を提供して、日本の小児外科医療をリードしてきました。小児外科では比較的よくみられる鼠径ヘルニアのような病気から非常に希少で治療が困難な病気まで幅広く、患者さんが十分納得できる診療をおこなっています。

特色・方針・目標

 私達の特色は、常に実際の診療の場から学問・研究の場まで広く情報を集めて検討しており、現在得られる最も良いと考えられる治療を提供できることです。出生前診断された先天性の病気やこどもの悪性腫瘍、肝臓や小腸などの臓器移植が必要なるかもしれない病気など、手術や処置が必要なこどもの病気に関する相談から実際の検査や治療まで、困っている様々な患者さんを助けるお手伝いをしています。また大学病院として、それぞれが世界をリードしている他の診療科と強く連携していることが特徴的です。そのため小児外科としては極めて幅広く様々な病気を最良の方法で検査・治療することができます。国立成育医療研究センターや都立小児総合医療センターといった子ども専門の病院との医師交流があり、常に情報交換を行っていることも、慶應周産期・小児医療センターの中核科としてこども病院と同等以上の医療を実践するのに役立っています。私達はどんな患者さんにも安心して一番良い結果を得られる治療をよく話し合いながら実践していくことを目標としています。

次のような症状を扱っております

体のどこかが痛い・腫れた、元気がない、食欲がない、吐いてしまう、便が出ない、お腹が張る・痛い、便秘、便が赤い、便が白い

主な実績

1. 出生前診断症例の治療や新生児手術を多く扱っています。
2. 小児がん症例を多く扱う国際多施設共同臨床研究センターです。
3. 小児・成人の肝臓・小腸移植の実施機関です。
4. 長期静脈栄養を必要とする腸管不全の方を積極的に受け入れております。
5. 腹腔鏡手術を積極的に取り入れております。
6. 難治性疾患のリンパ管腫・その他のリンパ管・脈管奇形を治療します。
7. 海外の患者さんも受け入れています。
8. 海外で手術を既に受けられた方も気軽にご相談ください。

名称 件数 備考
呼吸器疾患手術 (先天性嚢胞性肺疾患・気管切開など、小児腫瘍を除く) 6.0 以下過去7年間の年間平均手術件数
上部消化管疾患手術 (先天性食道閉鎖症、十二指腸閉鎖、肥厚性幽門狭窄症、腹腔鏡下噴門形成術など) 9.1
下部消化管疾患手術 (ヒルシュスプルング病、直腸肛門奇形、人工肛門造設術など) 30.0
門脈胆道系疾患 (胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症、脾摘、胆道系IVR治療など、肝移植を除く) 15.9
胸壁・腹壁疾患 (横隔膜ヘルニア、臍帯ヘルニア、腹壁破裂、漏斗胸など) 4.1
肝移植・小腸移植 (脳死・生体) 3.9
小児腫瘍 (良性・悪性、肝移植を除く) 10.3
リンパ管疾患 (全身麻酔下、硬化療法・手術) 10.9

ご挨拶

 私達の小児外科は日本の草分けとして1959年に発足し、歴代の諸先輩方の活躍により、診療において、また研究において高い評価を受けてまいりました。小児外科学は外科発生学に基づいた先天性奇形の修復や小児腫瘍学などを大きな柱として発展してきましたが、今日では、様々な遺伝子の解析、発生学、腫瘍学の進歩により、幹細胞治療や再生医療の方向に発展しようとしています。また移植医療、胎児治療からライフサイクル全体をカバーする成育医療が私達の守備範囲です。私達はこのような分野に早くから参加して日本の小児外科医療をリードしてきました。このようなバックグラウンドを元に、私達は患者さんに良い治療を受けていただけるように日々努力しています。

関連相談窓口


小児がん相談窓口
小児リンパ管疾患相談窓口
小児腸管不全相談窓口
小児肝臓移植相談窓口

主な臨床研究


【治験】
☆L-105の小児肝性脳症患者を対象とした第II/III相臨床試験
☆難治性の脈管腫瘍・脈管奇形に対するNPC-12T(顆粒剤・錠剤)の有効性及び安全性を検討する他施設共同第Ⅲ相医師主導治験

【臨床研究】
☆国際共同多施設での胚細胞腫瘍低リスク患者に対する積極的サーベイランス第3相試験並びに標準リスクの小児及び成人患者に対するカルボプラチンとシスプラチンのランダム化比較試験;AGCT1531
☆Paediatric Hepatic International Tumour Trial 小児肝癌に対する国際共同臨床試験 (JPLT4: PHITT)
☆難治性血管・リンパ管疾患に対するシロリムスの安全性及び有効性を検討する多施設共同非盲検非対照試験
☆限局性リンパ管腫(lymphangioma circumscriptum)に対する無水エタノール注入硬化療法のパイロット研究
☆ヒトリンパ管腫由来リンパ管内皮細胞の解析
☆小児リンパ管疾患の症例調査
☆小児リンパ管疾患の組織細胞生物学的検討
☆直腸肛門奇形の症例登録と中央病型診断による多施設共同観察研究
☆腸管不全に対する小腸移植技術の確立に関する研究/腸管不全の予後因子に関する調査
☆カテーテル関連血流感染症に対する治療的エタノールロック療法の検討 (Keio-ELT2)
☆小腸移植拒絶反応の早期診断を目的としたドナー由来DNA断片の測定と拒絶反応の相関の解析
☆小児潰瘍性大腸炎診療における尿中プロスタグランディンE主要代謝産物の有用性の検討
☆小児外科治療対象疾患の治療成績に関する多施設共同研究
☆肝臓移植における移植片由来DNA断片の測定とおよび肝障害との相関解析
☆術前データによる胆道閉鎖症手術成功率の層別化と一次肝移植適応基準作成のための多施設共同後方視的調査研究
☆小児外科治療対象疾患の治療成績に関する多施設共同研究

詳しくはこちらをご参照ください。

医療関係の方へ


小児がん相談窓口


小児がんの子どもやその御家族の方を支援することを目的に黒田前教授が始めた本窓口は、その意思を継いで継続して参ります。小児がんの中でも固形腫瘍といわれる神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、肝芽腫、奇形腫などを中心に分からないこと、心配なこと、もっと詳しく聞きたいことなど、ご連絡を頂ければ、できるだけ早くにお返事を差し上げるようにしたいと思います。お気軽に御利用下さい。
こちらをご覧ください

小児リンパ管疾患相談窓口


リンパ管疾患は多くは小児期に発症します。リンパ管疾患にはリンパ管腫(リンパ管奇形とも呼ばれる)、リンパ浮腫、リンパ管拡張症、リンパ管形成不全、リンパ管腫症、リンパ漏、乳糜(にゅうび)腹水、乳糜胸など様々なものがありますが、それらを区別して正確に診断することは非常に難しく、また多くの場合、治療も困難であるのが現状です。
 リンパ管疾患に関する詳しい情報源がなく不安を感じている患者さんは少なくないようです。慶應義塾大学小児外科では、厚生労働省の事業として平成21〜23年度に行われたリンパ管腫の調査研究の主任研究者を務めた藤野明浩(現国立成育医療研究センター外科。非常勤)を中心として、リンパ管疾患に関する臨床及び研究の情報を広く収集し治療と研究に取り組んでいます。治療が難しい疾患においても、臨床診療と基礎研究に関する最新の情報をお伝えして、納得いくまで話し合うことを実践しています。
 リンパ管腫やその他のリンパ管疾患について心配なこと、詳しく知りたいことなどがありましたら、このメールアドレスにご相談ください。
こちらをご覧ください

小児腸管不全相談窓口


慶應大学病院では、腸管不全に対する根治的治療を目指しております。
慶應義塾大学病院では、手術によって腸が大量に切除されてしまった方、腸の動きが悪いために人工肛門が必要な方、点滴ルートからの感染症でお困りの方や点滴ルート閉塞の問題がある方、手術や病気の合併症による腸管皮膚瘻(ろう)でお困りの方、点滴栄養によって肝臓の機能に問題のある方、小腸移植を希望される方、子どもから大人まで積極的に受け入れております。当院の特徴として、外科治療・新規の薬物治療を含む内科治療・内視鏡治療・栄養療法・社会的サポートを包括的に提供する体制が整っておりますので、お気軽にご連絡ください。
こちらをご覧ください

小児肝臓移植相談窓口


慶應義塾大学臓器移植センター(https://www.hosp.keio.ac.jp/annai/shinryo/organ-transplantation-center/)では、子どもから大人まで肝臓移植が必要な患者さんに最新治療を包括的に提供する体制を整えております。胆道閉鎖症・原発性硬化性胆管炎・肝芽腫・Wilson病・自己免疫性肝炎・劇症肝炎・代謝性疾患などを対象に肝臓移植をおこなっており、治療でお困りのお子さんから成人の方まで、多くの患者さんの治療にあたっています。これまで350例以上の生体・脳死肝臓移植を行なっており、慶應義塾大学病院での小児肝移植では5年生存率は92.4%(胆道閉鎖症などの胆汁鬱滞性疾患では5年生存率96.3%)であり、全国平均の87.7%と比べても成績が良好です。肝臓移植に関して分からないことや心配なこと、もっと詳しく聞きたい事などありましたら、下記のメールアドレスにてご相談ください。
こちらをご覧ください

連絡先

より詳しい情報は当部門の専用webサイトをご覧ください。

受診について

  • 当院では患者さんの待ち時間を短縮するため、予約制を導入しています。
  • ご予約方法は一般の患者さんと医療関係の方で異なります