概要

側弯症は背骨が側方や後方にねじれる様に変形する疾患です。側弯症は乳幼児期や思春期の側弯症から高齢者の成人脊柱変形まで、全世代に渡って発症し、生活の質を低下させます。側弯症が重度に進行すると、腰背部痛、肺活量の低下、消化器症状、神経障害などを引き起こし、日常生活に大きな障害を来すようになります。この側弯症は様々な全身に及ぶ原因を基盤に発症し、難易度の高い治療を必要とする患者さんが多くあります。そのため当センターでは、整形外科、小児科、麻酔科、小児外科、リハビリテーション科、臨床遺伝センター、放射線科の複数科による情報共有と連携に基づいて、集学的かつ高度な側弯症診療の提供を目指します。さらに先端的な基礎研究に基づいた診断方法、新しい画像解析、そして先進的な治療技術の導入を進め、高いレベルの治療センターを目指します。

特色・方針・目標

1. 安心で安全な医療の提供
1) 円滑な多科多職種間の情報共有と連携に基づく、集学的かつ高度な側弯症診療の提供を目指します。
2) 早期からの多科・多職種連携による評価を行い、集学的な介入により進行の予防や合併症発生のリスク低減を図ります。
2. 先進的な医療の提供
1) 多科多職種間の連携を基に、先進的な医療を提供します。側弯症の分野で進歩の著しい先端的な診断及び治療技術の臨床へのtranslationを進め、国内トップの医療水準を目指します。
2) 高いエビデンスの基づく新しい診断法、治療法を開発し治療成績の向上を目指します。
3. 新しい研究基盤
1) 治療成果について、多科の専門家により詳細な解析を行い、疾患の原因究明だけでなく、新たな診断方法、そして治療方法の開発を行います。

側弯症診療センターの運用イメージ図

対象疾患は次のようになっております

  • 先天性側弯症 他

  • 脊柱後弯症

  • 症候群性側弯症

  • マルファン症候群に伴った側弯症

  • 神経線維腫症に伴った側弯症

  • 神経原性側弯症

  • 筋原性側弯症

  • 成人脊柱変形

  • 思春期特発性側弯症

  • 早期発症側弯症

主な実績

年間200例を超える側弯症手術を行っております(2016年204例、2017年 263例、2018年 265例、2019年 211例、2020年 186例、2021年 265例、2022年 249件、2023年 218件)。

ご挨拶

脊柱側弯症(側弯症)は背骨が側方や後方にねじれる様に曲がる疾患です。側弯症が進行すると心理的なストレスを感じるだけでなく、腰痛や背部痛、肺活量の低下、消化器症状、神経障害などにより、日常生活活動に重大な障害を来すようになります。
側弯症は発症年齢によって早期発症側弯症、思春期側弯症、成人脊柱変形に大きく分類され、その病態は多種多様です。早期発症側弯症には、先天的な椎体変形が原因の先天性側弯症、神経や筋の異常や臓器の異常を伴う症候性側弯症など多くの病態があり、治療においては小児科、小児外科、臨床遺伝学センター、リハビリテーション科、麻酔科との密な情報共有と連携が必要です。思春期側弯症の発生頻度は1~2%と高く、特に女子に多くみられる疾患です。思春期の側弯症は主に側弯症学校検診で発見されることが多いため、学校検診を意識した外来診療と進行予防のためには装具治療の徹底が重要です。近年の高齢社会を背景に、成人脊柱変形も大きな課題となっています。高齢の方では骨粗鬆症やフレイルを合併していることが多く、身体機能だけでなく心肺機能が低下している場合が多く、治療に難渋します。治療にはペインクリニック(麻酔科)、リハビリテーション科、骨粗鬆症外来(整形外科)との協力により、進行予防や疼痛改善のための効果的な治療が必要です。
この様に脊柱側弯症治療を安全で効果的に行うには、単科だけででなく多科の先生方の協力が必須と考えており、この度、側弯症治療センターを設立しました。

整形外科、側弯症診療センター長 渡辺航太

整形外科、側弯症診療センター長 渡辺航太

研究紹介


側弯症診療センターでは側弯症の患者さんによりよい医療を提供できるよう、日々研究を行っております。
・遺伝子
2011年に世界で初めて全ゲノム解析により思春期特発性側弯症(AIS)の原因遺伝子としてLBX1を報告しました。その後、現在までに20個の原因遺伝子の同定に成功しております。最近では発症予測モデル、進行予測モデルの作成に成功しました。この成果を早く患者さんに届けられるように、鋭意研究を継続します。
・合併症対策
成人脊柱変形(ASD)に対する手術の合併症の中でも近位隣接椎間後弯変形(PJK)は発生頻度が高い合併症です。当センターではPJKを防ぐため、術前の対策として骨粗鬆症に対する治療(テリパラチドの投与)、スコアリング評価を用いたリスク評価、術中の対策としてロッドの形状、および手術手技の工夫(高分子ポリエチレンテープを用いたテタリング)を報告し、導入しています。

治療方針


(ア) 早期発症側弯症
・ 小児科の協力の元で早期に疾患を診断し、定期的な診察、装具療法、ギプス治療などの保存治療を行い、側弯症の治療と進行予防を目指します。
・ 症候群性側弯症では、心疾患、呼吸器疾患や消化器疾患など重大な疾患を併存している場合が多くあります。小児科、小児外科、リハビリテーション科と連携して側弯症及び併存疾患を包括的に評価して、集学的な治療を行います。

(イ) 特発性側弯症
・ 特発性側弯症は側弯症学校検診でスクリーニングされることが多い疾患です。その受け入れとなるべく、月曜日の午後に行っている側弯症外来だけではなく、土曜日の午後に側弯症検診外来を行い、定期的な診察や装具による保存治療を行います。
・ 特発性側弯症の進行には、年齢、家族歴、骨成熟の程度、性成熟の程度、側弯の大きさ(コブ角)、椎体の回旋など様々な因子が影響することが報告されています。これらの科学的な根拠を基に保存治療を行います。
・ 患者本人と家族を対象に、側弯症に対する正しい知識の啓蒙を積極的に行います。特発性側弯症では多くの場合に患者が多感な時期である思春期の女児であり、また診断時には何ら症状がない場合が多い。したがって、ご本人やご家族には病気の自然経過を中心に正しい知識の啓蒙を積極的に行い、通院の自己中断や装具の着用の遵守率などの向上を目指します。

(ウ) 成人脊柱変形
・ 成人の側弯症では、側弯症による障害だけでなく、骨粗鬆症やフレイルを合併し、治療に難渋する場合が多く見られます。そこで麻酔科、リハビリテーション科、骨粗鬆症外来と連携し集学的な治療を行い、疼痛コントロールや、骨粗鬆症などの併存疾患の治療を行い日常生活動作の改善と進行の予防を目指します。
(エ) 医療連携
・ 当科受診患者は都内、そして関東地方から通院されております。小児総合医療センター、成育医療センターをはじめとした小児病院、そして、東京都予防医学協会をはじめとする検診団体、そして、多くの高齢者を抱える一般整形外科と連携を強化し、循環型医療連携を促進していきます。

研究内容

側弯症遺伝子

受診について

  • 当院では患者さんの待ち時間を短縮するため、予約制を導入しています。
  • ご予約方法は一般の患者さんと医療関係の方で異なります